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タイ・ベトナムでは、QR決済やモバイルウォレットが日常的に利用され、飲食店や小売店、ECなど幅広い場面に浸透しています。近年は、海外でも自国の銀行アプリなどから支払えるクロスボーダーQR決済の連携も進んでいます。
この記事では、両国で利用されている代表的なモバイル決済の特徴や利用状況を整理し、店舗やEC、業務システムへの影響を解説します。
Bank of Thailandの2025年年次報告書によると、PromptPayの登録ID数は9,210万件、1日平均の送金件数は7,460万件に達しました。 ベトナムでもVietQRの利用が拡大し、2025年10月時点で約9,000万のモバイルバンキング口座が利用しています。
モバイル決済には、主に以下の2つがあります。
QR決済
店舗などのQRコードを銀行アプリで読み取り、銀行口座から支払う方法です。タイのThai QR Payment、ベトナムのVietQRが代表的です。
モバイルウォレット
専用アプリに銀行口座やカードなどを登録して利用するサービスです。タイのTrueMoney、ベトナムのMoMoやZaloPayなどがあります。
タイではPromptPayを使ったQR決済に加え、TrueMoneyなどのモバイルウォレットも利用されています。
PromptPayは、タイ銀行(Bank of Thailand)が推進する決済インフラで、2016年にサービスが開始されました。銀行口座に携帯電話番号や国民IDなどをひも付け、口座番号を入力せずに送金できます。
店舗では、PromptPayの仕組みを利用したThai QR Paymentが使われています。利用者は店舗のQRコードをモバイルバンキングアプリで読み取り、銀行口座から支払います。
Thai QR Paymentが小規模な店舗まで広がった背景には、導入のしやすさがあります。銀行や決済サービスをまたいで利用できる共通規格で、店舗側は紙に印刷したQRコードでも決済を受け付けられます。カード決済端末などの専用機器が不要なため、飲食店や屋台などにも導入しやすい仕組みです。
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TrueMoneyは、店舗でのQR決済のほか、送金、公共料金の支払い、オンラインショッピングなどに利用できるモバイルウォレットです。2026年には非接触で支払えるTap-to-Payも開始し、QRコード以外にも決済方法を広げています。
PromptPayとTrueMoneyの違いは以下のとおりです。
項目 | PromptPay | TrueMoney |
種類 | 銀行口座を基盤とした決済・送金インフラ | モバイルウォレット |
主な利用方法 | 銀行アプリからQRコードを読み取って支払い・送金 | TrueMoneyアプリから支払い・送金 |
資金の基盤 | 銀行口座 | ウォレット残高、銀行口座など |
主な用途 | 個人間送金、店舗でのQR決済 | 店舗決済、オンライン決済、送金、公共料金の支払いなど |
特徴 | タイの銀行間決済インフラとして広く普及 | 1つのアプリで複数の決済・金融サービスを利用できる |
代表的な決済方法 | Thai QR Payment | QR決済、オンライン決済、Tap-to-Payなど |
代表的な決済手段として、銀行口座を基盤とするVietQRのほか、MoMoやZaloPayなどのモバイルウォレットがあります。
VietQRは、ベトナム国家決済公社(NAPAS)と銀行などが展開するQRコードの共通ブランドです。銀行や決済サービス間で仕様を共通化し、異なる銀行間でもQRコードによる送金や決済を利用できるようにしています。
利用者は銀行などのアプリでQRコードを読み取り、銀行口座から送金・支払いを行います。店舗向けにはVietQRPayも展開されています。
2025年1〜10月にNAPASが処理したVietQRによる送金は36億件に達し、前年同期比で件数は52%以上、金額は85%増加しました。大型店舗だけでなく、市場や路上の飲食店、駐車場などにも利用が広がっています。
MoMoは、店舗やオンラインでの支払い、各種料金の支払い、金融関連サービスなどをアプリから利用できるモバイルウォレットです。ZaloPayも、店舗・オンラインでの決済、送金、公共料金の支払いなどに対応しています。
このほか、複数の銀行のモバイルバンキングアプリなどからQRコードで支払えるVNPAY-QRも利用されています。
タイとベトナムでは、2021年3月にQR決済システムの相互接続がパイロットとして開始され、2022年11月には正式な開通式が行われました。
対応する銀行アプリを使えば、タイからベトナムを訪れた人が現地のVietQRで支払ったり、ベトナムからタイを訪れた人がThai QR Paymentを利用したりできます。普段使っている銀行アプリを海外でも利用できるため、現地で新たに決済アプリを登録する手間を減らせます。
こうした取り組みは、ASEAN各国の決済システムをつなぐ「ASEAN Payment Connectivity」の一環です。タイではベトナムのほか、シンガポール、マレーシア、インドネシア、カンボジアなどとのQR決済連携も進んでいます。2025年には、中国のAlipay、UnionPay、WeChat Payからタイ国内のThai QRへ支払えるサービスも開始されました。
現地で店舗やECを運営する企業では、決済手段への対応だけでなく、売上データや会計処理との連携も考える必要があります。
商品やサービスを販売する際は、クレジットカードに加え、PromptPayやVietQR、モバイルウォレットなど、現地で使われている決済手段への対応も選択肢になります。
店舗ではPOSと決済サービスを連携し、ECでは決済代行サービスを通じて複数の決済方法を提供することもできます。
QR決済は、支払いを受け付けるだけでなく、販売管理などの業務システムと連携する方向にも広がっています。
ベトナムでは2026年8月、NAPASと販売管理プラットフォームのKiotVietが、VietQRPayを販売管理システムに展開するための提携を発表しました。決済ごとに注文情報と支払金額をひも付けることで、売上確認や決済の照合、返金・キャンセルなどを管理できます。
複数の決済サービスを導入する場合は、入金日や手数料、データ形式の違いも踏まえ、売上や入金をどのように管理するかを決めておく必要があります。
モバイル決済では、取引情報に加えて顧客情報を扱う場合があります。自社で保有するデータを整理し、アクセス権限や保存方法を適切に管理することが必要です。
個人情報を扱う場合は、タイ・ベトナムの個人情報保護制度も確認します。
両国のモバイル決済で注目したいのは、単にキャッシュレス化が進んでいることではありません。銀行やサービスをまたいで使えるQR決済の仕組みと、小規模店舗でも導入しやすい環境が普及を支えています。
決済は支払いだけで完結せず、販売管理や売上管理とつながる仕組みへと広がっています。現地で事業を展開する企業にとって、決済手段の選択は顧客の利便性だけでなく、業務システムの設計にも関わるテーマです。