タイ・ベトナムのEC市場を比較|主要プラットフォームと日本企業が参入前に確認したいIT環境

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タイとベトナムではEC市場が拡大し、ShopeeやLazada、TikTok Shopなどを活用したオンライン販売が広がっています。一方で、主要プラットフォームや決済、物流、消費者行動には国ごとの違いがあります。

日本企業が参入する際は、販売チャネルの選定に加え、受注・在庫・決済・物流の連携や、日本本社と現地法人の運用体制まで見ておく必要があります。

本記事では、両国のEC市場の違いと、参入前に押さえておきたいシステム・IT運用のポイントを整理します。

タイ・ベトナムでEC市場が拡大している

米国国際貿易局(ITA)によると、タイのEC市場規模は2024年の約218.3億ドルから、2025年には約234.5億ドルへ拡大すると予測されていました。オンライン販売の80%超がモバイル端末経由で、ShopeeやLazadaに加え、TikTok Shopを利用したソーシャルコマースも伸びています。

ベトナム商工省傘下の電子商取引・デジタル経済庁によると、2025年のEC市場規模は約310億ドルで、25.5%の成長となりました。ECデータ分析会社Metricの調査では、Shopee、TikTok Shop、Lazada、Tikiの主要4プラットフォームのGMVも約429.7兆ドンと、前年比34.75%増えています。310億ドルはEC市場全体、429.7兆ドンは主要4プラットフォームだけの数値です。

タイとベトナムのEC市場を比較

タイとベトナムでは、主要プラットフォームやECの利用傾向に違いがあります。特にベトナムではShopeeとTikTok Shopへの集中が進み、2025年には両社で主要4プラットフォームのGMVの約97%を占めました。

主な違いは次のとおりです。

比較項目

タイ

ベトナム

主要プラットフォーム

Shopee、Lazadaが中心。TikTok Shopも成長

Shopee、TikTok Shopが中心

モバイル利用

オンライン販売の80%超がモバイル端末経由

スマートフォンやSNS経由のEC利用が拡大

販売の特徴

ライブコマース、ソーシャルコマースが拡大

TikTok Shopを通じたソーシャルコマースの存在感が大きい

タイのEC市場の特徴

タイではモバイルを起点としたEC利用が定着しています。ITAが紹介するETDAのデータでは、モバイルコマースがEC取引の74%、アプリ経由の取引が65%を占めています。モバイルウォレットも取引全体の23%に達しており、自社ECでは商品検索から購入、決済までをスマートフォンで進めやすい導線が求められます。

ITAは越境ECの項で、Shopee、Lazada、TikTokなどの主要プラットフォームに約300万の販売者が参加し、3億点を超える商品が出品されていると紹介しています。

日本からタイ向けに販売する場合は、税制の変更にも注意が必要です。従来は1,500バーツ以下の輸入品が関税免除の対象でしたが、2026年1月1日に廃止されました。現在は金額にかかわらず、品目に応じた関税と7%のVATが課されます。越境ECでは、関税やVATを含めて販売価格と収益性を見積もります。

ベトナムのEC市場の特徴

ベトナムではShopeeとTikTok Shopへの集中が進んでいます。新たにEC事業を始める場合は、Shopeeに加え、TikTok Shopを含むソーシャルコマースとの連携も初期段階から検討します。

一方、Metricの調査では、2025年に主要4プラットフォームで活動する販売者数は前年比約7.4%減の約60万人となりました。GMVが伸びる一方で販売者数は減っており、競争は厳しくなっています。

制度面では、2026年7月1日に電子商取引法と政令第248/2026/NĐ-CPが施行されました。販売者とライブコマース配信者の電子本人確認義務には経過措置が設けられており、2027年1月1日から適用されます。

チャネル選定と並行して、本人確認への対応も運用設計に組み込みます。

タイ・ベトナムでECを展開する主な方法

主な販売方法は、「ECモールへの出店」「自社ECサイトの構築」「SNS・ライブコマースの活用」の3つです。

一つに絞る必要はなく、ECモールとSNSを組み合わせたり、自社ECサイトと複数のモールを併用したりする方法もあります。商品やターゲット、現地での認知度、運用体制に応じて選びます。

ECモールへ出店する

ShopeeやLazada、TikTok Shopなど、利用者の多いECモールへ出店する方法です。

既存の集客基盤を利用でき、決済や配送などの機能も用意されていることが多いため、自社で販売環境を一から構築するより参入しやすくなります。

一方、複数のモールへ出店すれば、商品情報や価格、在庫、受注の管理先も増えます。チャネルを広げる場合は、個別に運用するのか、一元管理するのかをあらかじめ決めておきます。

自社ECサイトを構築する

自社ECサイトでは、デザインや商品情報、キャンペーン、会員機能などを自社の方針に合わせて設計できます。顧客との接点を直接持ちやすく、ブランド構築や顧客データの活用にも向いています。

その分、決済、受注、在庫、物流、CRMなど、販売を支える仕組みは自社で整えなければなりません。現地の決済手段や物流サービスへの対応も必要です。

日本ですでにECサイトや基幹システムを運用している場合は、既存環境を海外でも利用するのか、現地向けに別の環境を用意するのかを決めます。

SNS・ライブコマースを活用する

タイ・ベトナムでは、SNSから販売までをつなげるソーシャルコマースも広がっています。

TikTok Shopでは、動画やライブ配信を見たユーザーが、そのまま商品を購入できます。商品の認知から購入までの導線を短くできる点が特徴です。

ECモールや自社ECと組み合わせる場合は、それぞれのチャネルの役割を決めて運用します。

EC参入で必要になる主なシステム連携

複数のECモールや自社ECサイトを運用すると、商品、在庫、受注、顧客、決済、物流の情報が複数のシステムに分かれます。個別に管理すると、更新漏れや在庫の不一致、受注処理の遅れが起こりやすくなります。

参入前に、どの情報をどこへ連携するかを整理します。

商品・在庫情報を連携する

商品名、価格、画像、SKU、在庫数などを複数の販売チャネルで個別に更新すると、情報がずれやすくなります。

たとえば、あるモールで商品が売れても別のチャネルに在庫数が反映されなければ、実在庫を超えて注文を受け付ける可能性があります。

複数チャネルを運用する場合は、商品・在庫情報を一元管理し、各ECモールや自社ECサイトへ連携する仕組みを用意します。

受注・顧客情報を連携する

複数チャネルで販売すると、注文内容、購入者情報、配送先、支払状況などの受注データも分かれます。

各モールの管理画面で個別に処理する方法もありますが、注文数が増えるほど確認や転記の負担は大きくなります。OMS(受注管理システム)やERPへ受注情報を集約すれば、注文状況や売上をまとめて管理できます。

顧客情報をCRMなどで活用する場合は、販売チャネルごとに取得できるデータの範囲も異なります。自社ECサイトとECモールで保有できる情報を整理し、連携先を決めます。

決済・物流システムと連携する

販売後は、決済、出荷、配送まで複数の処理が続きます。ECシステムと決済サービス、倉庫、配送システムの間でデータを受け渡せる構成が必要です。

決済では、注文情報と支払状況をどのシステムで管理するかを決めます。物流では、受注後の出荷指示、在庫引当、配送状況を倉庫や配送会社のシステムと連携します。

販売チャネルが増えるほど、個別運用では処理が分散します。事業開始時に、どこまでをシステム間でつなぐかを決めます。

日本企業がEC参入前に確認したい6つのポイント

タイ・ベトナムでEC事業を始める前に、販売チャネル、データ管理、決済・物流、本社連携、データの保存先、運用体制を整理します。

参入後にシステムを継ぎ足すほど、二重管理や運用の複雑化が起こりやすくなります。販売からバックエンドまで、最初に全体像を決めます。

1. どの販売チャネルを利用するか

ShopeeやLazada、TikTok ShopなどのECプラットフォームに加え、自社ECサイトも選択肢になります。

集客力や手数料、既存システムとの連携、運用負荷を比較し、自社に合うチャネルを選びます。

2. 商品・受注・在庫をどこで管理するか

商品、受注、在庫について、どのシステムを情報の基準とするかを決めます。

たとえば、商品情報はERP、在庫はWMS、受注はOMSで管理する方法があります。現地向けECシステムに一部の情報を持たせる構成も考えられます。

管理元が曖昧だと、価格や在庫数がシステムごとに食い違いやすくなります。どのシステムをマスターとするかを明確にします。

3. 現地の決済・物流サービスに対応できるか

自社ECサイトを展開する場合は、現地で使われている決済手段や物流サービスへの対応を確認します。

タイ・ベトナムでは、クレジットカードのほか、QR決済や銀行系決済、電子ウォレットなども利用されています。日本向けのECサイトをそのまま展開すると、現地ユーザーが使いたい決済方法に対応できない場合があります。

物流では、商品の保管場所、出荷方法、配送事業者、返品対応まで整理します。現地倉庫や3PLを利用する場合は、受注・在庫システムとの接続方法も確認します。

関連記事:タイ・ベトナムで普及するモバイル決済とは?企業システムへの影響を解説

4. 日本本社とどのデータを連携するか

現地のEC事業を日本本社から管理する場合は、本社へ送るデータと更新頻度を決めます。

主な対象には、売上、在庫、商品マスタ、受注、会計、顧客データなどがあります。本社への報告と販売チャネル間のデータ同期は分けて考えます。

たとえば、経営管理用の売上実績であれば日次、会計情報であれば日次や月次で足りるケースがあります。一方、複数チャネルで共有する在庫は、セールやライブコマースで注文が集中した際に更新が遅れると、実在庫を超えて受注する可能性があります。

在庫の同期頻度は、注文量やモール側のAPI仕様に合わせて決めます。本社への報告頻度と同じにする必要はありません。

本社側と現地側で通貨、言語、商品コードが異なる場合は、データ変換の方法も決めます。

5. データをどこで保存・処理するか

海外クラウドを利用したり、日本本社とデータを共有したりする場合は、国外へのデータ移転に関する規制も確認します。

タイでは個人情報保護法(PDPA)が施行されており、個人データを国外へ移転する場合にも一定の条件が定められています。また、一定のサービス提供者には、コンピューター犯罪法に基づくトラフィックデータの保存義務があります。

ベトナムでは、2026年1月1日に個人データ保護法と政令第356/2025/NĐ-CPが施行されました。ベトナムで収集した個人データを国外のサーバーへ移す場合や、海外クラウドで保存・処理する場合は、越境データ移転に該当します。

越境移転では、原則として影響評価書類を作成し、移転開始から60日以内に当局へ提出します。一部に免除規定があります。適用条件はデータの種類や移転方法などによって異なるため、個別のケースでは現地の専門家への確認が必要です。

たとえば、ベトナムで取得した顧客情報をシンガポールのクラウドへ保存し、さらに日本本社のCRMへ連携する場合、データは「ベトナム→シンガポール→日本」と移動します。

このような構成では、次の点を整理します。

  • どのデータを国外へ移転するのか

  • どの国・地域で保存・処理するのか

  • 日本本社と現地法人のどちらが管理主体になるのか

  • データ移転に必要な手続きを満たしているか

  • ログやバックアップをどこに保存するのか

関連記事:タイ・ベトナムのクラウド利用環境とは?現地法人が導入時に確認したいポイント

6. 誰がシステムを運用するか

システム構築とあわせて、運用の担当範囲も決めます。

日本本社、現地法人、現地ベンダー、日本側のITベンダーなど複数の組織が関わる場合は、誰がどこまで担当するかを明確にします。

主な運用業務は次のとおりです。

  • アカウント・権限管理

  • システム障害への対応

  • セキュリティ監視

  • バックアップ

  • システム変更

  • クラウド利用料の管理

  • ECモールや物流事業者との連絡

構築担当者だけがシステム構成を把握している状態では、障害や担当者変更の際に対応が遅れます。運用担当と責任範囲を明文化し、特定の担当者に依存しない体制にします。

関連記事:海外現地法人のITがブラックボックス化しやすい理由 ― IIJの営業として1年間ベトナムで見てきた現実と、ひとつの考え方

タイ・ベトナムのEC参入ではIT運用まで含めて設計する

タイ・ベトナムでEC事業を立ち上げる際は、販売チャネルだけを先に決めるのではなく、商品・在庫・受注の管理、データの保存先、日本本社との連携、運用責任まで含めて設計しておく必要があります。

参入前にデータの流れと運用主体を整理しておけば、販売チャネルや取扱量が増えた際にも対応しやすくなります。

IIJ Managed Cloudでは、タイ・ベトナムをはじめとするASEAN地域で、クラウド環境の構築・運用を支援しています。ECシステムのクラウド移行や、日本本社・現地法人をまたぐ運用体制についてもご相談いただけます。

松岡 憲太
記事を書いた人
松岡 憲太

株式会社サーバーワークス・海外事業室
大手通信事業者にて、国内外インターネットバックボーンや海底ケーブルの運用保守、日系企業向け通信インフラの提案・構築に従事し、海外ではマレーシアのネットワークオペレーションセンター立ち上げ、中東・アフリカ地域では海外営業から現法社長として経営管理まで幅広く経験。サーバーワークス入社後は海外事業専属として、ASEAN地域の日系企業向けAWS導入・運用支援や海外拠点の立ち上げ等を牽引。趣味は旅行と釣り。

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