海外現地法人のITがブラックボックス化しやすい理由 ― IIJの営業として1年間ベトナムで見てきた現実と、ひとつの考え方

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海外現地法人では、本社と現地でITへの優先度がずれやすい

海外に現地法人を持つ企業と仕事をしていると、日本本社と現地法人のITに対する考え方のギャップを強く感じる場面があります。

本社側は「セキュリティはこの水準を確保したい」「できればもう少し堅牢な構成にしたい」と考える。一方で、実際に支払いを行うのは現地法人。

この構図が、海外拠点のITを複雑にしています。

多くのタイやベトナム等の現地法人では、ITに十分な予算を割けないのが現実です。

工場投資や人件費が優先され、ITはどうしても後回しになりがち。

「できるだけ安く」「今動けばいい」という判断から、価格重視でオンプレ機器を購入し、ローカルベンダーに構築を任せるケースが少なくありません。

安さを優先したIT環境は、後から全体像が見えにくくなる

問題は、その“後”に起きます。

日本本社は「一定レベルのセキュリティが入っている前提」で話を進めるものの、現地では設定内容はベンダー任せ、ドキュメントも十分に残らない。

結果として、誰も全体像を把握していないIT環境が出来上がり、気づいたときにはブラックボックスになっています。

設定内容が残らない

現地ベンダーに構築を任せた場合でも、設計書や設定内容が十分に整理されていれば、後から確認できます。

しかし実際には、構築当時の担当者しか詳細を知らない、設定情報がファイルとして残っていない、管理画面へのログイン情報が曖昧といった状態も起こります。

その結果、障害時やセキュリティ確認時に「そもそも今どうなっているのか」を調べるところから始めなければなりません。

引き継ぎが途切れやすい

体制面の課題も重なります。

日本人はマネージャーや支店長が一人だけ、あとはローカルスタッフで運営する体制。

さらに海外拠点では人の入れ替わりも多く、IT担当者が固定されません。

「前任者が何を設定したのか分からない」「管理者情報が引き継がれていない」という話は、決して珍しいものではありません。

オンプレ環境は、見えにくい運用コストを抱え続ける

また、安価なIT製品を購入して、壊れたら入れ替えるという運用が続くケースもあります。

一つひとつの金額は小さく見えても、その都度初期費用が発生し、設定を理解している人もいないため、同じようなトラブルが繰り返されます。

ここで一度、視点を変えて考えてみる必要があります。

オンプレ機器を置くということは、

  • 機器そのものの購入費用
  • 定期的な機器入替にかかる初期費用
  • それらを面倒見る人、もしくはベンダーの人件費
  • 引き継ぎ不足や属人化によるトラブル対応の負荷

こうしたコストや手間を、継続的に背負い続けるということでもあります。

一方で、クラウドはランニングコストが見えやすく、「毎月費用が発生するのは高そうだ」と感じられがちです。

ただ、オンプレ環境を維持するためにかかっている人・時間・入替の負荷まで含めて考えてみると、規模や体制によっては、違った見え方になるケースもあります。

海外拠点では「管理しやすさ」も重要な判断軸になる

必ずしも「クラウドの方が良い」「オンプレが悪い」という話ではありません。

人数が限られ、IT担当者が固定されにくい海外の現地法人においては、管理しやすさや引き継ぎのしやすさを重視するという考え方も、ひとつの選択肢になります。

その延長線上にあるのが、オンプレ機器を極力置かず、AWSなどのクラウドを活用するという考え方です。

物理機器の管理を減らし、構成や設定を可視化しやすくすることで、人が入れ替わっても「何がどうなっているのか分からない」状態を避けやすくなります。

すべてを現地任せにせず、本社と現地をつなぐ体制を持つ

さらに、すべてを内製で抱え込まず、本社とも現地法人ともやりとりができる、信頼できるITベンダーに一定範囲を任せるという体制も現実的です。

最低限のセキュリティと運用を、管理できる形で維持する。

そのための相手を持つことが、海外拠点では重要になってくるのではないでしょうか。

角澤 由衣
記事を書いた人
角澤 由衣

Sales Division / Sales Executive.
IoTソリューション営業として3年間、日系製造業のお客様を中心に、OTネットワークの提案・導入支援に従事。製造ラインの可視化や生産データ収集を目的としたネットワーク構築、さらにはリモート保守や製品競争力強化を支える通信環境の整備など、現場課題の解決に尽力。
2025年4月よりホーチミンに拠点を移し、東南アジア市場におけるネットワークインフラやクラウド活用をテーマに営業活動中。趣味は海外旅行で、各地のハードロックカフェグッズを収集。ベトナムではフットサルにも挑戦。愛読書は『D.Gray-man』。

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