AWS料金はどう計算する?見積もりの前提整理からツール入力までの手順

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アマゾンウェブサービス(AWS)を使う前に料金を計算しようとして、手が止まってしまうケースがあります。AWSの見積もりは単純な計算作業ではなく、稼働時間やリージョン、冗長化の有無、ストレージ容量、データ転送量など、構成の前提条件によって変わるためです。前提が整理できていないままでは、AWS Pricing Calculatorに何を入力すべきか判断できません。

本記事では、AWS料金を見積もる際に最初に整理すべき前提条件と、どの要素が料金に影響するのかを実務目線で整理します。そのうえで、AWS Pricing Calculatorを使った基本的な見積もり手順を、主要サービス(EC2、S3、RDS)を例に解説します。

あわせて、見積もりと実際の請求額がずれやすいポイントや、見積もりを運用の中で更新していく考え方も紹介します。

AWS料金の計算が難しく感じる理由

AWSの見積もりは単純に「合計金額を出す作業」ではなく、システム構成や運用条件を前提として組み立てる必要があります。

AWSの見積もりは「計算」ではなく「前提整理」で決まる

四則演算で終わらない理由

AWSの料金は、サービスごとに課金単位が異なります。たとえばAmazon EC2は稼働時間、Amazon S3は保存容量、Amazon RDSは構成や冗長化など、料金を決める要素がバラバラです。

そのため、単純に「月額いくら」と計算するのではなく、どのサービスをどの条件で使うのかを先に決めなければ見積もれません。

入力値を決められずに止まる典型例

AWS Pricing Calculatorを開いても、インスタンスタイプやストレージ量、データ転送量などの入力項目が並びます。前提が整理できていないと、「何時間稼働するのか」「東京リージョンで良いのか」「マルチAZにするのか」といった判断ができず、入力が進まなくなります。

見積もり結果が想定とズレやすい背景

稼働時間・冗長化の前提不足

見積もりと実際の請求額がズレる最大の理由は、稼働時間や冗長化の前提が抜けていることです。検証環境のつもりで計算したのに本番では24時間稼働になったり、可用性要件でマルチAZ構成を追加したりすると、費用は大きく変わります。

データ転送や運用コストの見落とし

AWS料金はサーバーやストレージだけで決まりません。インターネットへのデータ転送、バックアップ、監視、ログ保管など、運用に伴うコストも積み上がります。初期見積もりではここが省略されやすく、結果として「思ったより高い」というズレにつながります。

AWS料金は何で決まるのか|計算前に理解すべき基本構造

まず「どこで課金が発生するのか」を整理する必要があります。AWSはサービス数が多い一方で、料金の考え方は共通しており、基本構造を押さえれば見積もりの難易度は下がります。

AWSの課金モデルの全体像

従量課金の考え方

AWSは従量課金制を採用しており、使った分だけ料金が発生します。オンプレミスのように設備を先に固定費として持つのではなく、利用状況に応じて費用が変動します。そのため、料金計算では「何をどれくらい使うか」を前提とします。

「使った分」の内訳

AWS料金は単一のサービス利用料ではなく、複数の要素が積み上がって構成されます。たとえばサーバーを立てる場合でも、計算処理そのものに加えてストレージやネットワーク利用が発生します。見積もりでは、この内訳を分解して捉えることが基本です。

料金に影響する主要な要素

コンピューティング

Amazon EC2やAWS Lambdaなどの計算リソースは、料金の中心になりやすい要素です。インスタンスタイプ、稼働時間、台数によって費用が大きく変わります。特に「24時間稼働か、業務時間だけか」で差が出ます。

ストレージ

Amazon S3やAmazon EBSなどのストレージは、保存容量だけでなくアクセス頻度やストレージクラスによって料金が変わります。バックアップやスナップショットもストレージ費用として積み上がるため注意が必要です。

データ転送

AWS料金で見落とされやすいのがネットワーク費用です。AWS内の通信は無料でも、インターネットへの送信やリージョンを跨ぐ転送には課金が発生します。構成によってはここが想定以上に膨らむことがあります。

オプション・運用系コスト

監視(Amazon CloudWatch)、ログ保管、バックアップ、自動化設定など、運用に伴うサービスもコストに含まれます。初期見積もりでは省略されがちですが、本番運用では無視できない要素になります。

AWS料金を計算する前に整理すべき前提条件

AWS料金の見積もりで最も重要なのは、ツール操作の前に前提条件を整理することです。Pricing Calculatorに入力する数値は、構成と運用の前提が決まって初めて意味を持ちます。ここが曖昧なまま計算しても、見積もりは現実とズレやすくなります。

システム構成に関する前提

利用サービスの範囲

まず整理すべきは、どのサービスを使うかです。Amazon EC2だけなのか、Amazon RDSも含むのか、配信にAmazon CloudFrontを使うのかで料金の構造は変わります。見積もりは「サービス単位で積み上がる」ため、利用範囲を最初に切り分ける必要があります。

冗長化(シングルAZ/マルチAZ)

可用性要件によって費用は大きく変わります。単一AZで運用するのか、障害対策としてマルチAZ構成にするのかで、インスタンス数やデータ複製コストが変動します。本番環境では冗長化が前提になるケースが多いため、早い段階で判断しておくべきです。

開発・検証・本番の区別

同じ構成でも、環境の用途によってコストの考え方は異なります。検証環境は必要なときだけ起動するのに対し、本番環境は常時稼働が前提です。見積もりでは「どの環境を対象にしているか」を明確にしないと、稼働時間や台数の前提がズレてしまいます。

運用条件に関する前提

稼働時間(常時/業務時間)

料金差が最も大きく出るのが稼働時間です。24時間365日動かすのか、業務時間だけ起動するのかで月額は大きく変わります。まずは稼働パターンを決めることが、現実的な見積もりの出発点になります。

監視・バックアップ

本番運用では監視やバックアップを省略できません。Amazon CloudWatchのメトリクス収集やログ保管、RDSの自動バックアップなどは追加コストになります。初期見積もりの段階から、最低限必要な運用コストを含めて考えることが重要です。

将来の増減想定

AWSのコストは利用量に応じて変動します。ユーザー数の増加、データ容量の拡大、アクセス増加などを想定せずに見積もると、運用開始後にすぐ前提が崩れます。初期段階では厳密な予測よりも、増減が起きるポイントを把握しておくことが大切です。

AWS Pricing Calculatorで料金を計算する流れ

次はAWS公式の見積もりツールであるAWS Pricing Calculatorに入力して、料金を試算します。重要なのは、Calculatorは「料金を自動で出してくれる魔法のツール」ではなく、整理した前提を数値として反映するためのツールだという点です。

AWS Pricing Calculatorとは

できること

AWS Pricing Calculatorは、AWSサービスの利用料金を事前に見積もるための公式ツールです。Amazon EC2やAmazon S3、Amazon RDSなど主要サービスを選び、利用条件を入力することで月額費用の目安を算出できます。見積もり結果は保存や共有もできるため、社内検討やベンダーとの相談資料としても活用できます。

できないこと

Calculatorは実際の請求額を保証するものではありません。構成変更や利用量の増減、データ転送の発生などによって請求額は変動します。また、入力する前提が曖昧であれば、出てくる数字も現実とズレます。あくまで「前提条件に基づく試算」であることを理解して使う必要があります。

見積もり作成の基本ステップ

サービスの追加

まずは見積もりに含めたいAWSサービスを追加します。Amazon EC2だけでなく、ストレージやデータベース、ネットワーク関連も含めて構成全体として積み上げるのが基本です。

設定値の入力

次に、インスタンスタイプや容量、稼働時間などの条件を入力します。ここで必要になるのが、前章で整理した前提条件です。稼働時間や冗長化の有無によって金額が大きく変わるため、適当に入力せず、構成と運用の前提を反映させます。

合計金額の確認

入力が完了すると、サービスごとの内訳と合計金額が表示されます。単に総額を見るだけでなく、「どの要素がコストを押し上げているか」を確認することがポイントです。見積もりは費用を出すだけでなく、構成の判断材料として使うものです。

主要サービス別|AWS料金計算の考え方と注意点

AWS Pricing Calculatorでは多くのサービスを見積もれますが、特に料金への影響が大きいのはAmazon EC2、Amazon S3、Amazon RDSです。ここでは主要サービスごとに、どの項目がコストを左右しやすいかを整理します。

EC2の料金計算で見るべきポイント

インスタンスタイプ

Amazon EC2ではインスタンスタイプによって料金が大きく変わります。CPUやメモリ性能に応じて単価が異なるため、必要以上に大きいスペックを選ぶとコストが膨らみます。まずは用途に対して過不足のないタイプを選ぶことが基本です。

台数と稼働時間

Amazon EC2料金は「台数 × 稼働時間」で決まります。本番環境のように常時稼働する場合と、検証環境のように必要なときだけ起動する場合では月額が大きく変わります。見積もりでは稼働時間の前提を最初に固定することが重要です。

購入オプションの違い

Amazon EC2にはオンデマンドだけでなく、Savings Plansやリザーブドインスタンスなど割引オプションがあります。長期利用が前提の場合は購入オプションによって費用が大きく変わるため、見積もり段階で比較しておくべきポイントです。

S3の料金計算で見落としやすい点

ストレージクラス

Amazon S3は保存容量だけでなく、ストレージクラスによって単価が変わります。頻繁にアクセスするデータと、アーカイブ用途のデータでは適したクラスが異なります。データの性質に合わないクラスを選ぶと無駄なコストにつながります。

リクエスト数

Amazon S3は容量課金だけでなく、読み書きのリクエスト数でも料金が発生します。ログ保管や画像配信などアクセス頻度が高い用途では、リクエストコストも含めて見積もる必要があります。

データ転送量

S3単体では安く見えても、外部へのデータ転送が発生すると費用が増えることがあります。インターネット配信や別リージョンへの転送がある場合は、転送量を前提に含めておくべきです。

RDSの料金計算で差が出るポイント

マルチAZ構成

Amazon RDSでは可用性を高めるためにマルチAZ構成を選択できますが、その分コストは増加します。本番環境では標準的な選択肢になる一方、検証環境では不要な場合もあるため、環境ごとに切り分けて見積もる必要があります。

ストレージ構成

Amazon RDSの料金はインスタンス性能だけでなく、ストレージタイプや容量によっても変動します。特にIO性能を重視する構成ではストレージコストが上がりやすいため注意が必要です。

バックアップ保持期間

Amazon RDSは自動バックアップを設定できますが、保持期間が長いほどストレージ費用が積み上がります。本番運用では必須要素ですが、見積もり段階で含めておかないと請求額との差が出やすくなります。

見積もりと実際の請求額がズレる理由

AWS Pricing Calculatorで料金を見積もっても、実際の請求額が完全に一致するとは限りません。AWS料金は利用状況に応じて変動するため、見積もりはあくまで「前提条件に基づく試算」です。

初期見積もりが外れやすい典型要因

アクセス増加

運用開始後にアクセスが増えると、サーバー台数の追加や負荷分散が必要になり、料金も増加します。特にAmazon CloudFrontやデータ転送量、リクエスト数は利用量に比例して膨らむため、初期段階では想定しにくいポイントです。

構成変更

本番運用に入ると、可用性やセキュリティ要件に応じて構成が変更されることがあります。たとえばマルチAZ化、バックアップ強化、監視の追加などは代表例です。見積もり時点では省略していた要素が後から加わることで、請求額が上振れします。

データ量の増加

AWSではデータの蓄積に伴ってストレージ費用が継続的に増えていきます。Amazon S3の保存容量だけでなく、ログ保管やバックアップ、スナップショットなども積み上がるため、運用期間が長くなるほど差が出やすくなります。

「正確な金額」より「判断できる精度」を持つ

初期見積もりの役割

AWSの見積もりで重要なのは、1円単位で正確に当てることではありません。初期段階では「この構成なら月額はこのレンジになる」「コストが増える要因はどこか」を把握し、導入判断や設計検討に使える状態にすることが目的です。

精度を段階的に上げる考え方

見積もりは一度で完成させるものではなく、構成が固まるにつれて更新していくものです。PoC段階ではざっくり、設計が進めば詳細に、本番運用に入れば実績データをもとに調整する、と段階的に精度を上げることで現実的なコスト管理につながります。

AWS料金計算は一度で終わらせない

AWSは利用状況に応じてコストが変動するため、構成や運用が変われば見積もりも更新する必要があります。見積もりを継続的に見直すことが、AWSコスト管理の前提になります。

見積もりを更新すべきタイミング

PoC段階

PoCや検証段階では、目的は「料金を正確に出すこと」ではなく、コスト感を把握することです。ざっくりした前提で見積もりを作り、どの要素が費用に影響するかを確認することが重要です。

本番前

設計が固まり、本番構成が見えてきたタイミングでは見積もりを更新すべきです。冗長化、バックアップ、監視など本番運用で必要になる要素を反映しないと、導入後の請求額との差が大きくなります。本番前の見積もりは、社内稟議や予算確保の根拠にもなります。

運用開始後

運用が始まると、実際の利用量に応じてコストは変動します。アクセス増加やデータ蓄積によって当初の前提が崩れるため、定期的に実績と見積もりを突き合わせる必要があります。ここで初めて、見積もりが現実のコスト管理に直結します。

継続的なコスト管理につなげる考え方

定期的な再計算

AWSでは構成や利用量が変わるたびにコストも変動します。定期的に見積もりを更新し、どのサービスが増加要因になっているかを確認することで、無駄な支出を防げます。見積もりは「導入前ツール」ではなく「運用の管理ツール」として扱うべきです。

予算管理との連携

AWSの料金は固定費ではなく変動費です。そのため、予算枠を持たずに運用すると、想定外のコスト増につながります。見積もりを予算管理と結びつけ、計画と実績を比較できる状態を作ることが、クラウド運用では重要になります。

まとめ|AWS料金計算で迷わないために

AWS料金を見積もる際に重要なのは、Pricing Calculatorの操作そのものではなく、計算の前提を整理することです。AWSの料金はサービスごとに課金単位が異なり、構成や運用条件によって大きく変わります。

AWS料金計算は「前提整理 → 計算」の順で進めることが基本です。稼働時間、冗長化、データ転送、運用コストなどを整理したうえで初めて、ツール入力が意味を持ちます。

また、見積もりは一度作って終わりではありません。PoC、本番設計、運用開始後と段階に応じて更新しながら、判断できる精度を高めていくことが現実的なコスト管理につながります。

AWS に関するお悩みはありませんか?

AWS の使い方、見積もり、構成、運用などで迷いや不安がある場合は、お気軽にご相談ください。現地チームとの共通認識づくりや前提条件の整理から、判断をスムーズに進めるお手伝いをします。

本サービスは、日本で最初の商用インターネットサービスプロバイダーとして誕生した IIJ グループと、AWS プレミアティアサービスパートナーであるサーバーワークスが共同で提供する「IIJ Managed Cloud for AWS」です。東南アジアを含むグローバル環境での利用にも対応し、現場の判断に寄り添った AWS 支援を行っています。

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加藤 一喜
記事を書いた人
加藤 一喜

株式会社サーバーワークス マーケティング部 マーケティング1課 独立系ISPやSIerの営業としてお客様のシステムやネットワークの最適化に従事した後、サーバーワークスに入社。入社後は、電力系キャリア様の開発標準化プロジェクトや、鉄道事業者様の構内読み上げシステムの提案・導入を実施。現在はイベントマーケティングとインサイドセールスを担当。 車の洗車が趣味。 AWS Certified Database – Specialty (DBS)

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