タイ最大級のIT展示会「DIGITECH ASEAN THAILAND」出展レポート

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2025年11月19日から21日にかけて、タイ・バンコク近郊で開催された「DigiTech ASEAN Thailand 2025 & AI Connect 2025」に出展いたしました。

今回の出展では、現地のITトレンドを肌で感じると同時に、日本とタイにおける展示会文化やマーケティング戦略の決定的な違いを実感する機会となりました。現地の様子と、そこから得られた気づきをレポートします。

店の前に立っている人々 中程度の精度で自動的に生成された説明

シリキット王太后陛下の崩御とタイ国内の様子

本題に入る前に、タイ国内の状況について触れさせていただきます。

展示会直前の2025年10月24日、タイ国民より「国の母」として深く敬愛されてきたシリキット王太后陛下が、93歳で崩御されました。これを受け、タイ政府は1年間の服喪期間を設け、国民に対しても90日程度の服喪や、黒または地味な色の服装の着用を推奨しています。

バンコク市内では、至る所に追悼の祭壇や肖像画が設置されており、国中が悲しみに包まれている様子が伝わってきました。

ビジネスへの直接的な支障は限定的でしたが、今回のDIGITECH出展に際しても、白や黒などの服装着用を推奨するアナウンスがありました。ただ、実際に現地で1週間ほど過ごしてみると、街中や会場での服装に関して厳格に徹底されているというよりは、それぞれの敬意の示し方でお別れをしている、という印象を受けました。


アジア最大級の会場「IMPACT」とDIGITECHの熱気

今回の会場となったのは、バンコク中心部から車で30〜40分ほどのノンタブリ県にある「IMPACT Exhibition & Convention Center(通称:インパクト)」です。

総展示面積14万平方メートルを超えるアジア最大級の複合施設で、日本でいう幕張メッセや東京ビッグサイトのような場所です。特筆すべきはフードコートの充実ぶりで、展示会の合間でも食事や休憩場所に困ることはありません。

イベント自体の規模も大きく、出展社数は350社以上、来場者数は約8,000人規模(想定)。日系企業も多数出展しており、私たちと同様にクラウド関連企業も出展しており、現地市場への関心の高さが伺えました。


「生演奏」に「屋台」まで?日本とは違う展示会文化

実際にブースに立ってみて、日本との文化的な違いに驚かされる場面がいくつかありました。

会場を包む「生演奏」とおもてなしの心

まず驚いたのが、会場内で行われていた「生演奏」です。 基調講演が始まる前の待ち時間や、ホール横の通路などで常に奏者が演奏をしていました。日本では静かなBGMが一般的ですが、こちらではライブ感のある音楽が常に流れています。

なぜビジネスの場で生演奏? と不思議に思われるかもしれませんが、ここにはタイ特有の文化背景があるようです。 タイには「サヌック(Sanuk)」という、「何事も楽しむ」ことを良しとする精神が根付いています。仕事の場であっても、楽しさや心地よさは不可欠な要素なのです。 また、これは来場者をもてなすホスピタリティの一環とも言えます。音楽があることで場の緊張がほぐれ、リラックスした状態で会話が弾む――。堅苦しい静寂よりも、こうした和やかな空気が商談のハードルを下げ、人と人との距離を縮める役割を果たしているように感じました。(タイの皆さん、合ってますか?)

「騒音」すらも「好機」と捉える

また、講演会場(セッションエリア)の真横に企業ブースが配置されている点も特徴的です。 日本では、講演の音声と商談の声が混ざるため「騒音」として敬遠されがちな配置ですが、タイでは「人の流れが最も多い特等席」として非常にポジティブに捉えられているようです。

前述の生演奏も含め、多少の音は気にせず、むしろ人が集まる賑やかな場所を好むタイのおおらかさと、実利を優先する価値観を感じました。

待ち伏せしない、自然な商談スタイル

会場内には飲食を提供する「屋台ブース」まで出店されており、非常にリラックスした雰囲気です。 オペレーション面でも、日本のように通路で人を強引に呼び止める「待ち伏せ型」の展示員はほとんど見かけません。その代わり、来場者は興味があれば自分から足を止め、しっかりと説明を聞こうとする姿勢を持っています。

私たちも、自然な対話からスムーズに商談に入ることができ、日本よりもエンゲージメントが高い(対話の質が高い)と感じました。

AIへの熱視線と意外な来場者層

ブースの傾向や来場者の属性にも、今のタイ市場の「現在地」が表れていました。

会場内で圧倒的に人が集まっていたのは、やはり「AI関連企業」のブースです。 これは単なる流行ではなく、タイ政府が掲げる経済モデル「Thailand 4.0」や「国家AI戦略マスタープラン」といった国策が背景にあります。デジタル経済への転換を急ぐタイでは、製造業からサービス業までAI活用への投資意欲が非常に高く、具体的なソリューションを求める来場者の熱気を感じました。

その一方で、セキュリティ関連企業の出展は比較的少ない印象を受けました。 市場全体が「守り」よりも「攻め(AI活用・DX)」に大きく舵を切っているフェーズなのかもしれません。

学生団体や「ついで」の来場者も多数

また、日本との大きな違いとして、学生が授業の一環として多数来場している姿が見受けられました。タイでは大学教育レベルからデジタル人材の育成に力を入れており、彼らも将来の有力なエンジニア候補です。 さらに、IMPACTのような巨大施設では複数のイベントが同時開催されているため、「隣のイベントに来たついでに寄ってみた」というフラットな来場者も多くいます。

こうした多様な来場者が混在しているのが面白いですね。

今回は中規模のブースでしたが、やはり大きなブースを構える企業には自然と人が集まっていました。次回はより大規模なブース展開で視覚的なインパクトを確保しつつ、中身のオペレーションはタイの皆さんに歓迎されるように最適化させる――そんな「ハイブリッドな戦略」で、タイ市場でのクラウド活用をさらに推進していきたいと思います。

加藤 一喜
記事を書いた人
加藤 一喜

株式会社サーバーワークス マーケティング部 マーケティング1課 独立系ISPやSIerの営業としてお客様のシステムやネットワークの最適化に従事した後、サーバーワークスに入社。入社後は、電力系キャリア様の開発標準化プロジェクトや、鉄道事業者様の構内読み上げシステムの提案・導入を実施。現在はイベントマーケティングとインサイドセールスを担当。 車の洗車が趣味。 AWS Certified Database – Specialty (DBS)

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