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AWSの基礎|使い始める前に押さえておきたい仕組み・用語・考え方

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目次

アマゾンウェブサービス(AWS)を使うことは決まったものの、「用語が多く全体像がつかめない」「何から理解すればよいのか分からない」と感じて、学習や検証の手前で止まってしまうケースはよくあります。

本記事では、AWSを初めて使う方向けに、操作手順や個別サービスの詳しい使い方ではなく、仕組み・構造・考え方といった前提知識を整理します。アカウントやリージョンといった基本概念、代表的なサービスの役割、運用や料金の考え方など、AWSを使い始める前に最低限押さえておきたいポイントを解説します。

AWSを使い始める前に押さえておきたい全体像

アマゾンウェブサービス(AWS)を理解するうえで、つまずきやすいのは個別サービスや操作方法ではなく、「AWSとは何を提供している仕組みなのか」という前提の捉え方です。ここでは、AWSを学び始める前に押さえておきたい全体像を整理します。

AWSは「1つのサービス」ではなく「サービス群」

AWSは、単一の製品やツールではありません。サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク、セキュリティなど、用途ごとに分かれた多数のサービスを組み合わせて使うクラウドサービス群です。

「AWSを使う=何か1つを導入する」という理解だと、全体像がつかみにくくなります。必要な機能を選び、組み合わせて使うことが前提になっている点が、AWSの基本的な考え方です。

まずは、AWSが「何でもできる1つの箱」ではなく、「目的別に用意された部品の集合体」であることを理解しておく必要があります。

オンプレミスとの最大の違いは「所有」から「利用」への変化

AWSを理解するうえで重要なのが、オンプレミスとの考え方の違いです。オンプレミスでは、サーバーやネットワーク機器を自社で購入・所有し、管理することが前提でした。

AWSでは、インフラを自分で持たず、必要な分を必要な期間だけ利用します。物理的な機器を意識する場面は減り、「どの機能をどれだけ使うか」という視点に変わります。

AWSを学ぶ順番を間違えると混乱しやすい理由

AWSはサービス数が多く、専門用語も多いため、いきなり操作や構築に入ると全体像を見失いがちです。個別サービスの説明を先に読んでも、「それが何のために必要なのか」が分からなくなるケースもあります。

特に、アカウント、リージョン、料金、権限といった共通概念を理解しないまま進むと、設定や判断の背景がつかめなくなります。手順通りに操作はできても、なぜそうするのかが理解できない状態になります。

AWSを学ぶ際は、まず全体構造と前提となる考え方を押さえ、そのうえで個別サービスに進むのが効率的です。

AWSの基本構造を理解する

AWSを使い始める際に重要なのは、個別サービスの操作方法よりも、全体を支える基本構造を理解することです。ここでは、最初につまずきやすい「アカウント」と「場所(リージョン/AZ)」の考え方を整理します。

アカウントとは何か

まず Amazon Web Services のアカウントを作成します。このアカウントは、単なるログインIDではなく、利用料金・リソース・権限管理の単位になります。

サーバーやストレージ、ネットワークなど、AWS上で作成するすべてのリソースは、特定のアカウントにひもづきます。請求もアカウント単位で行われるため、「誰がどこまで使っているか」を管理する基礎になります。

最初にアカウントという概念を理解しておかないと、後から権限管理やコスト管理で混乱します。AWSでは、アカウントが利用の起点になると考えておくとよいでしょう。

リージョンとAZ(アベイラビリティゾーン)の考え方

AWSでは、サービスを利用する「場所」を選びます。この場所の単位がリージョンで、リージョンの中に複数存在する拠点が AZ(アベイラビリティゾーン)です。

リージョンは国や地域単位で分かれており、AZは同一リージョン内にある独立したデータセンター群です。同じリージョン内でも障害の影響を分散できる設計が可能になります。

重要なのは、AWSのリソースは「どのリージョンに作るか」を意識して選ぶ必要がある点です。オンプレミスのように、物理的な場所を意識せずに使えるわけではありません。

場所を選ぶことが設計やコストに影響する理由

AWSでは、リソースを配置する場所によって、設計やコスト、運用の考え方が変わります。例えば、リージョンをまたいで通信を行う場合、追加の通信コストが発生することがあります。

可用性を高めるために複数AZを使う設計にすると、構成は複雑になりますが、障害に強くなります。一方で、シンプルな構成であればコストや運用負荷を抑えやすくなります。

このように、場所の選択は設計判断そのものに直結します。AWSを使い始める前に、「どこに置くか」という視点を持っておくことが、後の判断をスムーズにします。

AWSで「サービス」とは何を指すのか

戸惑いやすいのが、「サービス」という言葉の使われ方です。ここでは、AWSにおけるサービスの位置づけと、代表的なサービスを用途別に整理します。

AWSにおけるサービスの位置づけ

AWSにおける「サービス」とは、特定の機能を提供する単位を指します。サーバー、ストレージ、データベース、ネットワークなど、役割ごとに独立したサービスとして提供されています。

重要なのは、AWSでは1つのサービスだけでシステムが完結することは少ないという点です。複数のサービスを組み合わせて、1つのシステムや環境を構成することが前提になっています。そのため、サービス名を暗記するよりも、「どんな役割の部品なのか」という視点で理解することが大切です。

H3:代表的なサービスの役割を用途で理解する

AWSの多種のサービスを最初からすべてを把握する必要はありません。まずは、よく使われる基本的な役割を押さえておくだけで十分です。

  • コンピューティング(EC2 など)

    • アプリケーションを動かすための処理能力を提供するサービスです。オンプレミスのサーバーに相当し、OSやミドルウェアを動かす基盤になります。

  • ストレージ(S3 など)

    • ファイルやデータを保存するためのサービスです。バックアップやデータ保管、コンテンツ配信など、幅広い用途で利用されます。

  • データベース(RDS など)

    • データを構造化して管理するためのサービスです。データベースの運用負担を軽減しつつ、アプリケーションから利用できます。

  • ネットワーク(VPC)

    • AWS上に仮想的なネットワーク空間を作るための仕組みです。サーバーやデータベースをどのようにつなぐか、外部とどう接続するかを設計します。

これらはすべて、単体で使うものではなく、組み合わせて使うことを前提とした部品です。

どうやって操作するのか?

AWSのサービスは、マネジメントコンソールと呼ばれる管理画面から操作します。Webブラウザ上で利用でき、各サービスの作成や設定、状態確認を行います。

初心者のうちは、まずこのコンソールを通じて操作するケースが一般的です。操作はあくまで手段であり、「どのサービスを、何のために使うのか」を理解したうえで触ることが重要です。

AWS利用の前提となる考え方

AWSを使いこなすうえで重要なのは、サービスの名前や操作方法よりも、「どのような前提で使う仕組みなのか」を理解することです。ここでは、AWSを利用する際に押さえたい考え方を整理します。

従量課金の考え方(料金詳細ではなく構造)

AWSでは、基本的に使った分だけ料金が発生する従量課金が採用されています。これは「月額固定で使い放題」という考え方とは異なります。

重要なのは、何を使うと課金が発生するのかという構造を理解することです。サーバーを起動している時間、保存しているデータ量、通信量など、利用状況に応じて費用が積み上がります。

料金の細かい単価を覚える必要はありませんが、「使い続けるとコストが発生し続ける」という前提を持っておくことが重要です。

リソースを「作る・使う・消す」という発想

AWSでは、サーバーやストレージなどのリソースを、必要に応じて作成し、使い、不要になったら削除します。オンプレミスのように、一度用意した設備を長期間使い続ける前提ではありません。

検証環境や一時的な用途では、使い終わったリソースを削除することで、コストや管理負担を抑えられます。「消せる前提」で設計・運用できる点は、AWSの特徴です。逆に、不要なリソースを残したままにすると、意図せずコストが発生し続けます。

オンプレミス感覚のままだと起きやすいミス

AWSをオンプレミスと同じ感覚で使うと、つまずきやすいポイントがあります。代表的なのが、「サーバーは立てたらそのまま」「使っていなくても問題ない」という考え方です。

AWSでは、起動しているだけで料金が発生するリソースも多く、放置がコスト増につながります。権限やネットワーク設定も、初期状態のまま使うとリスクになることがあります。

AWSでは、「必要なものだけを、必要な期間だけ使う」という前提に頭を切り替える必要があります。

つまずきやすい運用・管理のポイント

AWSは柔軟に使える反面、運用や管理の前提を理解しないまま使い始めると、思わぬトラブルにつながります。ここでは、初期段階で押さえておく代表的なポイントを整理します。

セキュリティの基本「責任共有モデル」を知る

AWSでは、セキュリティに関する責任が サービス提供側と利用者側で分かれているという考え方が採用されています。これを「責任共有モデル」と呼びます。

インフラそのものの安全性はサービス提供側が担いますが、設定や運用に関する責任は利用者側にあります。「クラウドだからセキュリティはすべて任せられる」と考えると、認識のズレが生じます。まずは、「どこまでが自分たちの責任なのか」を理解したうえで使い始めることが重要です。

権限管理(IAM)は「最小権限」が原則

AWSでは、誰がどの操作をできるかを細かく制御できます。この権限管理の考え方が「最小権限」です。

最初からすべての操作を許可すると、設定ミスや意図しない変更が起きるため、必要な操作だけを許可し、段階的に権限を追加するほうが安全です。運用が始まってから権限を整理するのは手間がかかるため、初期段階で考え方を揃えておきます。

ログ・監視は「トラブルが起きてから」では遅い

AWSでは、操作履歴やシステム状態を記録・監視する仕組みを利用できます。これらは、トラブルが起きた後に原因を調べるためだけのものではありません。

事前にログや監視を設定しておくことで、異常に早く気づけたり、影響範囲を把握しやすくなります。設定せずに運用を始めると、問題が起きた際に状況を追えなくなります。最初から高度な監視を行う必要はありませんが、「後からではなく最初に考える」姿勢が大切です。

AWS初心者がやらなくてよいこと・やるべきこと

多くの人が「ちゃんと理解せねばならない」「失敗してはいけない」と構えてしまいますが、最初から完璧を目指す必要はありません。ここでは、判断の切り分け方を整理します。

最初から全サービスを理解しようとしない

AWSには多くのサービスがありますが、最初からすべてを理解する必要はありません。用途が決まっていない段階で網羅的に学ぼうとすると、情報量に圧倒されてしまいます。

重要なのは、「今の目的に関係する範囲だけ」を理解することです。使わないサービスを深く調べることは、初期段階では負担でしかありません。まずは、基本構造と代表的な役割を押さえ、必要になったタイミングで個別サービスを理解すれば大丈夫です。

検証環境と本番環境を分けて考える

AWSでは、環境を分けて構築することが比較的容易です。この特性を活かし、検証用と本番用を同じ感覚で扱わないことが重要です。検証環境では試行錯誤が前提ですが、本番環境では安定性や管理が求められます。最初の段階から、「これは検証用か、本番用か」という視点を持っておくことで、後の運用が整理しやすくなります。

まずは小さな用途から始める

AWSは、小さく始めて段階的に広げられる点が特徴です。いきなり大きなシステムを移行する必要はありません。影響範囲が限定された用途から始めることで、AWSの考え方や運用の感覚をつかみやすくなります。

最初の目的は「完璧な構成を作ること」ではなく、「使いながら理解すること」と考えると、進めやすくなります。

AWS 基礎を理解した次のステップ

ここまでで、AWSの全体像や前提となる考え方を把握できたはずです。この段階で重要なのは、すぐに構築に入ることではなく、次の判断に進むための準備を整えることです。

具体的なサービス選定・構築に進む前の確認点

サービス選定や構築に進む前に、改めて確認したいのは「何を実現したいのか」という目的です。検証環境を作りたいのか、本番システムを構築したいのかによって、選ぶサービスや設計方針は変わります。いきなり個別サービスの比較に入らず、用途と制約条件を整理しておくことで、判断がしやすくなります。

自社で進めるか、支援を活用するかの判断

AWSの設計や運用には一定の知識と工数が必要です。自社の体制やスキルを踏まえ、どこまでを自分たちで進めるかを考える必要があります。

検証や小規模な用途であれば自社で進めやすい一方、運用負荷やセキュリティ要件が高い場合は、外部の支援を活用する選択肢もあります。「すべて自社でやるか、すべて任せるか」ではなく、段階的に判断することが重要です。

設計・運用フェーズの記事への導線

AWS 基礎を理解した次の段階では、設計や運用の具体的な考え方がテーマになります。

どのように構成を組むのか、どう運用するのかといった内容は、基礎理解の延長線上にあります。

この先は、目的別のサービス選定、設計の考え方、運用時の注意点などを扱う記事に進むことで、理解を深めていくことができます。

まとめ

AWSは、特定のツールやサービスを覚える前に、「どういう前提で使う仕組みなのか」を理解することが重要です。アカウントやリージョンといった基本構造、サービスは部品として組み合わせて使うという考え方、従量課金や運用を前提とした発想を押さえることで、学習や検証のつまずきを減らせます。

また、最初からすべてを理解しようとせず、小さな用途から始めましょう。検証環境と本番環境を分けて考え、運用や管理の視点を早い段階で持つことが、後のトラブルや手戻りを防ぎます。

AWS基礎はゴールではなく、次の設計・構築・運用フェーズに進むための土台です。全体像と考え方を整理したうえで、自社の目的や体制に合った形で、段階的に活用を進めていくことが重要です。

加藤 一喜
記事を書いた人
加藤 一喜

株式会社サーバーワークス マーケティング部 マーケティング1課 独立系ISPやSIerの営業としてお客様のシステムやネットワークの最適化に従事した後、サーバーワークスに入社。入社後は、電力系キャリア様の開発標準化プロジェクトや、鉄道事業者様の構内読み上げシステムの提案・導入を実施。現在はイベントマーケティングとインサイドセールスを担当。 車の洗車が趣味。 AWS Certified Database – Specialty (DBS)

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