AWS導入前に知っておきたい料金の仕組み・主要サービス別のコストと節約のコツ

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AWSは柔軟な従量課金制で使える一方、料金体系がわかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。導入後に「思ったよりコストがかかった」とならないために、課金の基本構造から主要サービスの料金の考え方、見落としがちなコスト要因、節約術までわかりやすく解説します。

AWSの料金体系の基本構造

「使った分だけ課金」する従量課金制

AWSの料金は、基本的に「利用した分だけ支払う」という従量課金制で成り立っています。サーバーやストレージを前払いで購入する必要はなく、使った時間・容量・処理量に応じて課金される仕組みです。この柔軟さがクラウドの魅力である一方で、料金が細分化されているため全体像を把握しづらい面もあります。


基本的な課金単位の考え方

AWSのサービスごとに課金の単位は異なります。代表的なものは以下の通りです。

  • 時間単位:EC2インスタンスなど、サーバーの稼働時間に基づく課金

  • 容量単位:S3やEBSなど、保存しているデータ量(GBやTB単位)

  • データ転送量:インターネットやリージョン間のデータ送信量(GB単位)

  • リクエスト数:APIコールやアクセス回数に応じた課金(例:S3のGET/PUTリクエスト)


サービスごとの課金の違いに注意

課金単位はサービスによって異なります。たとえば、EC2はインスタンスの利用時間に加え、アタッチしているストレージや転送量も課金対象です。一方、S3はデータ容量に加えてリクエスト数や転送量で料金が決まります。Lambdaのように実行回数と実行時間で課金されるサービスもあるので、従量課金制といっても、サービスごとに課金単位が違うため“どこでお金が発生するか”を事前に把握しておく必要があります。


課金対象になる主な要素

コンピューティング(EC2など)

仮想サーバーを提供するEC2は、インスタンスタイプ・利用時間・OSライセンスなどで料金が決まります。リザーブドインスタンスやSavings Plansを利用すると長期利用で割引が適用されます。


ストレージ(S3/EBSなど)

S3は保存容量が基本課金単位で、アクセス頻度に応じてクラスを選ぶことでコストを最適化できます。EBSはボリューム容量とスナップショットが課金対象となり、使わないまま残しておくと無駄なコストになりやすい点に注意が必要です。


ネットワーク(データ転送)

AWS内でのデータ転送は一部無料ですが、インターネット向けの送信やリージョン間転送には料金がかかります。外部ユーザーに大量配信するアプリケーションでは転送料金が主要コストになりがちです。


その他マネージドサービス(RDS/Lambdaなど)

RDSはデータベースのインスタンス、ストレージ、バックアップ領域に対して課金されます。Lambdaは実行回数と実行時間で料金が算出され、月間の無料枠も用意されています。


主要サービス別 料金の考え方とコストの目安

EC2の料金の仕組み

EC2はAWSで最も利用されるサービスのひとつで、料金は利用形態と構成要素によって決まります。契約方法で単価が変わるほか、インスタンス稼働以外にもストレージやデータ転送が加算されるため、総額を見積もる際は分解して考えます。


オンデマンド/リザーブド/スポットの違い

  • オンデマンド

    • 必要なときに起動して使った分だけ支払う方式。

    • 初期導入や変動が大きいワークロードに向いています。

  • リザーブドインスタンス(RI)

    • 1年または3年の利用を前提に契約することで、大幅な割引が適用されます。

    • 安定的に使うサーバーに適しています。

  • スポットインスタンス

    • AWSの空きキャパシティを利用するため、単価は大幅に安くなります。

    • 需要次第で中断される可能性があるため、バッチ処理や検証環境などに利用されます。


EC2料金の構成要素(インスタンス/ストレージ/データ転送)

  • インスタンス料金

    • インスタンスタイプごとの時間単価

  • ストレージ料金

    • EBSボリュームとスナップショット

  • データ転送料金

    • インターネット向け送信やリージョン間通信


S3の料金の仕組み

S3はデータを保存・取り出すオブジェクトストレージで、保存容量に加えてリクエストや転送でも課金されます。アクセス頻度に応じたストレージクラスを選ぶことでコストを最適化できます。

ストレージ容量

  • 標準クラスは高頻度アクセス向け

  • IAやGlacierに移行すれば低コストで保管可能


リクエスト数・データ転送コスト

  • PUT/GETなどのリクエスト数で課金

  • インターネットやリージョン外への転送が追加コスト


RDSの料金の仕組み

RDSはマネージド型のデータベースサービスで、インスタンス・ストレージ・バックアップの3要素で料金が構成されます。バックアップ保持やIOPSの指定など、構成次第でコストに差が出やすい点が特徴です。

インスタンスコスト/ストレージコスト/バックアップ関連コスト

  • インスタンス

    • DBエンジンとサイズで課金

  • ストレージ

    • プロビジョンド容量に応じた課金

  • バックアップ

    • 自動バックアップの無料枠超過分は追加課金


その他よく使われるサービスの料金

EC2やS3以外にも、利用頻度が高いサービスはそれぞれ独自の料金モデルを持っています。LambdaやCloudFrontは利用規模が拡大するほど料金の見落としが発生しやすいため注意が必要です。

Lambdaの料金モデル

  • 実行回数と実行時間(メモリ割り当て × 秒数)で課金

  • 無料枠があり、軽量処理ならほぼ無料で利用可能


CloudFront(CDN)/データ転送コスト

  • エッジロケーションからのデータ転送量とリクエスト数で課金

  • 配信地域ごとに単価が異なるため、対象ユーザーの分布を考慮する必要がある


見落としがちなコスト要因と注意点

データ転送料金の見落としに注意

受信データは原則無料ですが、インターネットへの送信やリージョン間・AZ間の転送には料金が発生します。外部配信やマルチリージョン構成では、転送料金が予想以上に膨らむことがあり、アーキテクチャ設計時に考慮すべきポイントです。


一時停止したEC2でもストレージ料金は発生する

EC2インスタンスを停止すると計算リソースへの課金は止まりますが、接続しているEBSボリュームやElastic IPは引き続き課金されます。開発環境などで停止状態を長期間放置すると、不要なストレージコストを払い続けることになりえます。


古いバックアップ・スナップショットの放置によるコスト増

EBSスナップショットやRDSの自動バックアップは便利ですが、古いものを放置するとGB単位で課金が続きます。保持期間を長く設定した場合や、検証用に何度もスナップショットを残している場合は注意が必要です。定期的な棚卸しと、不要なバックアップの削除が必要です。


無駄なリソースの消し忘れ

検証や一時利用で作成したリソースを削除し忘れるケースもよくあります。未使用のEBSボリューム、アタッチされていないElastic IP、放置されたロードバランサーやログ、監視メトリクスなどは少額でも積み上がれば無駄なコストです。コスト管理ツールで可視化し、不要なリソースを削除するようにしましょう。


AWSの料金を節約するコツ

リザーブドインスタンス/Savings Plansの活用

長期間安定して利用するリソースは、リザーブドインスタンス(RI)やSavings Plansを活用することで割引が受けられます。RIはインスタンスタイプやリージョンを固定する代わりに最大7割近い割引を得られ、Savings Plansはより柔軟にCompute全般に割引を適用できます。基盤となるシステムほど、この仕組みを組み合わせてコストを下げるのが効果的です。


スポットインスタンスの活用

短時間で処理を終えるバッチ処理やテスト環境には、スポットインスタンスが有効です。通常のオンデマンドよりも安価に利用できる反面、AWS側の都合で停止される可能性があるため、冗長化やリトライが効くワークロードに限定して活用すると安心です。


オートスケーリングで無駄なコストを抑える

システム負荷に応じて自動でリソースを増減させるオートスケーリングを設定すれば、ピーク時に不足するリスクを防ぎつつ、アイドル時間の無駄な稼働を削減できます。時間帯や曜日によって利用パターンが決まっている場合は、スケジュールベースのスケーリングを組み合わせるとより効率的です。


不要なリソースの定期的な棚卸しと削除

遊休状態のEBSボリュームや古いスナップショット、使われていないロードバランサーなどは、気づかないうちにコストを圧迫します。定期的に棚卸しを行い、不要なリソースを削除する仕組みを運用に組み込むことで、継続的なコスト最適化が可能です。


利用状況のモニタリングとアラート設定活用

AWS Cost ExplorerやCloudWatchのアラートを活用すれば、異常な利用増加をすぐに検知できます。あらかじめ予算やしきい値を設定しておけば、想定外の課金を未然に防げるため、導入初期からの仕組み化が推奨されます。


導入前に試しておきたい料金シミュレーション

AWS Pricing Calculatorの使い方概要

AWSを導入する前に、AWS Pricing Calculatorを使って料金を試算しておきましょう。Calculatorでは、利用するサービスやリージョン、インスタンスタイプ、ストレージ容量、データ転送量などを入力するだけで、月額の見積もりを算出できます。見積もりは保存や共有も可能なため、社内の検討資料としても活用できます。


見積もり時に注意するポイント

料金シミュレーションを行う際は、以下の点に注意が必要です。


  • データ転送コストを必ず反映する

    • インターネットへの送信やリージョン間転送は大きなコスト要因になります。

  • 付随コストを考慮する

    • EBSスナップショットやRDSバックアップ、S3リクエスト数、CloudFrontリクエストなど、主要リソース以外にも課金ポイントがあります。

  • 割引モデルを考慮する

    • リザーブドインスタンスやSavings Plansは長期的に安定利用するケースでは有効ですが、短期利用や負荷が読めない場合には必ずしも適さないこともあります。オンデマンド料金と比較しながら検討し、自社の利用パターンに合うかどうかを整理してから選ぶのが賢明です。


これらを踏まえて試算しておけば、導入後に「思ったより高かった」というリスクを抑えられます。


まとめ

AWSの料金は「従量課金制」で柔軟に使える一方、課金ポイントが細かいため把握を誤ると想定以上のコストが発生します。データ転送やバックアップのような“見落としがちな要素”は、利用を続けるほど積み上がっていきます。

コストを最適化するには、安定稼働分はリザーブドインスタンスやSavings Plansで割引を受ける、変動の大きい処理はスポットやオートスケーリングで調整する、そして不要リソースを定期的に棚卸しするといった運用が効果的です。

導入前には必ずAWS Pricing Calculatorでシミュレーションを行い、主要サービスの利用量・付随コスト・割引モデルを織り込んだ現実的な見積もりを確認しましょう。

加藤 一喜
記事を書いた人
加藤 一喜

株式会社サーバーワークス マーケティング部 マーケティング1課 独立系ISPやSIerの営業としてお客様のシステムやネットワークの最適化に従事した後、サーバーワークスに入社。入社後は、電力系キャリア様の開発標準化プロジェクトや、鉄道事業者様の構内読み上げシステムの提案・導入を実施。現在はイベントマーケティングとインサイドセールスを担当。 車の洗車が趣味。 AWS Certified Database – Specialty (DBS)

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